50代の若さでこの世を去った沢井忠夫。その演奏に接したことのある全ての人々が、叶わないと知りながらも、是非もう一度聞きたいと願うであろう、不世出の天才箏曲演奏家でした。東京芸術大学卒業後、ほぼ同じ世代の山本邦山、青木鈴慕等と切磋琢磨しながら独自の演奏技法、作曲法を自らのものとし、その天性ともいえる研ぎ澄まされた感覚から紡ぎ出す音楽は、沢山のファンを獲得しました。出演したネスカフェTV-CM「違いの判る男」は、箏曲界のスターとしての沢井忠夫を全国に強く印象付けました。――CDアルバム 日本音楽の巨匠 Masters of Japan より
沢井忠夫本人の演奏動画は、インターネット上にはほぼありませんでした。(私が唯一知っていたのは、「違いの分かる男・・・」で有名なネスカフェゴールドブレンドのCMだけ。)ところが最近になって、Youtubeに在りし日の沢井忠夫の演奏動画がアップされているのを発見しました。アップロード者は、動画内にて共演している八島興作さんのようです。今のところ、箏と三味線を演奏している3本の動画を上げられていて、個人的にはもっと出してくれ!という気持ちです。とにかく上手い。
沢井忠夫作曲 ファンタジア
長沢勝俊作曲 春三題
沢井忠夫作曲 戯れ
おまけ ダバダー♪
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沢井忠夫(さわい ・ただお)
生田流箏曲家、作曲家
1937年 愛知県生まれ。
尺八家であった父の影響を受け、10歳の頃より箏を学ぶ。
1960年 東京芸術大学邦楽科卒業。
1962年 同大学専攻科卒業。在学中、NHK「全国今年のホープ」に選ばれる。
1964年 民族音楽の会(青木鈴慕、沢井忠夫、伊藤松博、高野和之、杵屋栄三郎、山本邦山)を結成。東京芸大卒業後より開催を続けたリサイタルにおいて「箏」という楽器に新しい世界を広げ、現代邦楽の第一人者の地位を築いた。また古典からジャズ、クラシックまで幅広いジャンルを箏で表現する様々な試みを通じて、箏音楽の領域拡大に多大な貢献を果たした。
1971年 「沢井忠夫箏独奏会」の成果に対し芸術祭優秀賞受賞。以後1977年、1983年に重ねて受賞。
1981年 芸術祭レコード部門において「沢井忠夫箏の軌跡」が優秀賞を受賞。
1984年 第2回中島健蔵音楽賞受賞。
活動の場は日本のみならず、アジア、欧米各国に及び、その演奏は常に絶賛を博した。また、創作活動も旺盛に行い、「情景三章」「讃歌」「鳥のように」「甦る五つの歌」などの箏独奏曲、「上弦の曲」「風の歌」などの箏・尺八二重奏曲から、箏、三弦の大合奏曲まで、現在もなお演奏家達がこぞって取り上げる優れた作品を多数発表した。さらに、演奏活動の傍ら後進の指導育成にも精力的に取組み、自身が主宰する沢井箏曲院を創設した。
1997年 4月1日死去。